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NINJA
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マサオは、この晴山で生まれ育った。

晴山は山もなく、雨が多い山陰にある。思えば昔から人々の希望と失望を

体現してきた街だった。

この残念なネーミングについては、親戚や近所のおばさんによって

マサオが小さな子供のときから、自嘲気味の笑いとともに刷り込まれてきた。

網野智世子 評価

マサオだけではなく、この晴山の子供らは、

皮肉っぽく鼻で笑う事をこの「晴山」に教わり、

それが昔から伝わってきた伝統の一つになっていた。





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廃屋となった工場跡地の側の路地をマサオは、出口を求めて歩いていた。

空は鈍色、雨は降っていなかったが、

昼なのか日が落ちたのか分からない空は、冷たい雨に当たるよりも

残酷に現実を映し出しているような気がした。

地面を見れば、崩れたアスファルトや、空き缶、「ご迷惑おかけしております」と吹き出しのついた

工事現場のイラスト。そのそばのむき出しの土に根をはるくすんだ色の雑草を見て

少しでも命の息吹を感じようと思ったが、

マサオを包む空気自体が、20年前に賑やかだった頃、この界隈で生活していた人の

吐息の集合のような気がして、かび臭い匂いが

鼻の粘膜から脳まで張り付めてきた。


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今は、音もなく忍び寄ってくる、不安以外の何者も

マサオの味方ではなかった。


こんなに息が詰まる3次元の世界は

人が考えて作り出せるようなものではなかった。

人が作り出さなかったものから生まれたのが、

この捨てられた街、晴山だった。


マサオは、この街を出たかった。

それだけだった。





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